“調理後に残る廃食用油の処分は、適切な方法で行う必要があります。
誤った捨て方は環境汚染につながるため、家庭でも事業者でも正しい知識が求められます。
この記事では、家庭でできる廃食用油の捨て方から、環境に配慮したリサイクルという選択肢、さらに事業者が遵守すべき法的な廃棄処理の方法まで、具体的な手順や注意点を網羅的に解説します。
状況に応じた最適な処分方法を確認しましょう。”
【大前提】廃食用油をシンクに流すのがNGな理由
“廃食用油とは、天ぷらやフライなどの揚げ物調理で使用した後の油や、炒め物でフライパンに残った油、消費期限切れで使えなくなった古い油などを指します。
これらを安易にキッチンのシンクに流す行為は、環境やインフラに深刻な悪影響を及ぼすため、絶対に避けなければなりません。
油は水に溶けない性質を持つため、排水管の詰まりや悪臭の直接的な原因となるだけでなく、最終的に河川や海の生態系を脅かす水質汚染へとつながります。”
水質汚染や排水管の詰まりを引き起こすため
“廃食用油をシンクに流すと、排水管の内部で冷えて固まり、食べ物のカスや髪の毛などと絡みついて蓄積します。
これが排水管の詰まりや悪臭、害虫発生の温床となります。
集合住宅の場合、自宅だけでなく建物全体の排水設備に影響を及ぼす可能性も考えられます。
さらに、下水処理施設で完全に処理されなかった油が河川や海へ流出すると、水面に油膜を張り、水中の酸素供給を妨げて魚や水生生物の生息環境を破壊します。
コップ一杯(約200ml)の油を魚が住める水質に戻すためには、お風呂の浴槽で数百杯分という膨大な量の水が必要になるといわれており、ごく少量でも環境に与える負荷は計り知れません。”
下水処理施設に大きな負担をかけてしまうため
“家庭や事業所から排出された汚水は、下水管を通って下水処理施設に集められ、微生物の働きなどを利用して浄化された後、河川や海へ放流されます。
しかし、廃食用油のような大量の油分が流入すると、浄化プロセスを担う微生物の働きが阻害され、処理能力が著しく低下します。
下水処理施設は油分の処理を想定して設計されてはいるものの、許容量を超えた油は大きな負担となり、処理機能の低下や設備の故障原因にもなり得ます。
処理しきれなかった油や他の汚染物質がそのまま自然界に放出されるリスクを高めるため、油は他の廃棄物と区別し、適切に分別して処分することが不可欠です。”
【家庭向け】廃食用油の正しい捨て方3パターン
“家庭で廃食用油を処分する場合、自治体のルールに従って適切に処理することが基本です。
最も一般的な方法は、可燃ゴミとして捨てることです。
その際、油を液体のままゴミ袋に入れると漏れ出して収集作業に支障をきたすため、必ず固めたり、何かに吸わせたりといった工夫が求められます。
ここでは、多くの自治体で認められている代表的な3つの捨て方を紹介し、それぞれの具体的な手順と注意点を解説します。”
市販の凝固剤で固めて可燃ゴミに出す方法
“廃食用油を手軽かつ安全に処分する方法として、市販の凝固剤(廃油処理剤)を使用するのが最も推奨されます。
この方法は、調理後で油がまだ熱いうち(約80℃以上)に凝固剤を投入し、粉が完全に溶けるまでよくかき混ぜるのが手順です。
その後、油が自然に冷めるまで1時間ほど放置すると、ゼリー状に固まります。
完全に固まったことを確認したら、フライ返しなどではがしてそのまま、あるいはビニール袋に入れて可燃ゴミとして捨てます。
凝固剤はホームセンターやスーパー、100円ショップなどで手軽に入手可能です。
作業時は油が熱いため、火傷をしないよう十分な注意が必要です。”
新聞紙や古い布に吸わせてから処分する方法
“凝固剤がない場合、新聞紙やキッチンペーパー、使い古しの布などに油を吸わせて捨てる方法もあります。
この方法では、必ず油を十分に冷ましてから作業を行うことが重要です。
熱いままの油を紙類に注ぐと、自然発火する危険性があるためです。
油が冷めたら、ビニール袋の中に新聞紙や布を詰め、そこへゆっくりと油を染み込ませていきます。
油が漏れ出さないよう、ビニール袋は二重にするなどの工夫をするとより安全です。
油を吸わせた紙や布は、袋の口を輪ゴムなどでしっかりと縛り、可燃ゴミとして処分します。
この際も、発火のリスクを避けるため、ゴミ袋を直射日光の当たる場所や高温になる場所に放置しないよう注意しましょう。”
牛乳パックに詰めて捨てる場合の注意点
“牛乳パックを容器として利用し、廃食用油を捨てる方法もありますが、いくつかの注意点があります。
まず、自治体によってはこの方法を推奨していない場合があるため、お住まいの地域のゴミ出しルールを事前に確認することが必須です。
この方法を実践する際は、新聞紙や古い布をパックの中に詰め、十分に冷ました油をそこに染み込ませます。
油が漏れるのを防ぐため、パックの口は粘着テープなどで隙間なく厳重に密閉しなければなりません。
ゴミ収集車でプレスされた際にパックが破損し、油が漏れ出す事故につながるリスクがあるため、凝固剤や紙に吸わせる方法がより安全で確実な選択肢とされています。”
環境に貢献!廃食用油のリサイクルという選択肢
“廃食用油は捨てるだけでなく貴重な資源として再利用することが可能です。
リサイクルを選択することはゴミの減量化だけでなく環境負荷の低減にも直接的に貢献する行動です。
近年では自治体や企業が連携し家庭から出る廃食用油の回収活動が各地で広がっています。
回収された油はさまざまな製品に生まれ変わります。
ここでは具体的なリサイクルの方法や回収された油がどのように再利用されるのかについて紹介します。”
自治体やスーパーに設置された回収拠点に持ち込む
“家庭で出た廃食用油を手軽にリサイクルに出すには、地域に設置された回収拠点を利用する方法が一般的です。
多くの自治体では、市役所や区役所、公民館、環境センターなどの公共施設に専用の回収ボックスを設置しています。
また、環境保全活動に積極的な一部のスーパーマーケットや生活協同組合の店舗でも、廃食用油の回収を行っている場合があります。
具体的な回収方法としては、揚げかすなどを取り除いた油を、よく洗って乾かしたペットボトルなどの密閉できる容器に入れ、拠点まで持参します。
回収場所や日時、回収ルールの詳細は自治体のウェブサイトや広報誌で確認できるため、事前に調べてから持ち込むことが重要です。”
リサイクルされた油の具体的な再利用例
“回収された廃食用油は精製処理を経てさまざまな資源へと生まれ変わります。
最も代表的な再利用例はバイオディーゼル燃料(BDF)です。
この燃料は軽油の代替としてゴミ収集車や市営バス農業用機械などに利用され化石燃料の使用量削減と二酸化炭素排出量の抑制に貢献します。
バイオディーゼル燃料は植物由来の原料から作られるため燃焼時に排出される二酸化炭素は植物が成長過程で吸収したものであり大気中の二酸化炭素濃度を増加させない「カーボンニュートラル」なエネルギーとされています。
その他にも家畜の飼料に添加される脂肪酸塗料やインク石けんろうそくクレヨンなどの化学製品の原料としても幅広く再利用されます。”
回収できる油と回収できない油の種類
“リサイクルのために回収できる油は、主に家庭で使われる植物性の食用油です。
具体的には、菜種油、大豆油、ひまわり油、コーン油、ごま油、オリーブオイルなどが対象となります。
揚げ物に使った後の油や、賞味期限が切れてしまった未使用の油も回収可能です。
一方で、回収できない油の種類も存在します。
牛脂(ヘット)や豚脂(ラード)、バターといった動物性の油、エンジンオイルなどの鉱物油はリサイクルの対象外です。
また、ドレッシングのように油以外の成分が多く含まれるものや、水分や揚げかすなどの不純物が大量に混じった状態の悪い油も回収できません。
リサイクルの品質と回収率を高めるため、油はできるだけきれいな状態で持ち込むことが望まれます。”
【事業者向け】産業廃棄物としての廃食用油の処理方法
“飲食店やスーパーの惣菜部門、食品加工工場など、事業活動に伴って排出される廃食用油は、家庭ゴミとは区別され、「産業廃棄物」の「廃油」に分類されます。
そのため、廃棄物処理法に基づいた適正な処理が法律で義務付けられています。
事業者は排出事業者としての責任を負い、許可を持たない業者への委託や不法投棄を行った場合、厳しい罰則の対象となります。
適切な処理フローを理解し、信頼できる専門業者に委託することが不可欠です。”
許可を持つ専門の収集運搬業者に回収を依頼する
“事業者が廃食用油を処理する場合、自ら処理施設に持ち込むか、都道府県や政令市から「産業廃棄物収集運搬業」の許可を得た専門業者に委託しなければなりません。
無許可の業者に処理を委託することは法律で固く禁じられており、違反した場合は排出事業者側にも懲役や罰金が科される可能性があります。
業者に委託する際は、必ず書面で委託契約を締結する必要があります。
また、廃棄物の処理が最終工程まで適正に行われたことを確認・管理するための伝票制度である「マニフェスト(産業廃棄物管理票)」を交付し、処理の各段階で業者から返送される伝票を保管する義務があります。”
信頼できる業者選びで確認すべきポイント
“適切な産廃処理業者を選ぶためには、いくつかの重要なポイントを確認する必要があります。
まず最も重要なのは、業者が自治体から「産業廃棄物収集運搬業許可」を取得しているかを確認することです。
許可証の提示を求め、許可の有効期限が切れていないか、取り扱い品目に「廃油」が含まれているかを必ずチェックします。
さらに、料金体系が明確で、事前に詳細な見積もりを提示してくれる業者であることも重要です。
不当に安価な料金を提示する業者は、不法投棄などのリスクも考えられます。
マニフェストの発行や管理に適切に対応してくれるか、リサイクルまで含めた環境に配慮した処理を提案してくれるかなども、信頼できる業者を見極めるための判断基準となります。”
廃食用油の処分に関するよくある質問
“廃食用油の処分方法について、基本的な知識はあっても、日常のさまざまな場面で細かい疑問が生じることがあります。
例えば、フライパンに少量残った油の扱いや、ドレッシングといった調味料に含まれる油分の処理方法などです。
また、事業者にとっては、処理を委託する際の費用相場も気になるところでしょう。
ここでは、そうした廃食用油の処分に関する具体的な質問に答え、日々の判断の助けとなる情報を提供します。
事業規模や排出量によって対応が変わる点も考慮します。”
フライパンに残った少量の油はどう処理する?
“炒め物や焼き物調理の後、フライパンの底に少量残った油は、シンクで洗い流してはいけません。
量が少ないからといって流してしまうと、排水管の詰まりや水質汚染の原因となることに変わりはありません。
このような少量の油の処理には、キッチンペーパーや要らなくなった新聞紙、古い布などで拭き取る方法が最も簡単で効果的です。
油汚れをしっかりと拭き取った後の紙や布は、そのまま可燃ゴミとして捨てられます。
このひと手間により、食器洗い時の洗剤や水の使用量を減らすことにもつながり、環境負荷の軽減と節約の両面でメリットがあります。
油汚れのひどい皿なども、洗う前に紙で拭う習慣をつけると良いでしょう。”
ドレッシングやマヨネーズの油も処分対象?
“ドレッシングやマヨネーズ、ラー油など、油分を多く含む調味料も、中身が残ったままシンクに流すのは避けるべきです。
これらに含まれる油分も、廃食用油と同様に環境へ負荷を与えます。
処分する際は、中身を新聞紙や古い布などの紙類にできる限り染み込ませてから、可燃ゴミとして廃棄します。
容器に残ったペースト状のマヨネーズは、ヘラなどでかき出すとスムーズです。
中身を取り出した後の容器は、自治体が定める分別ルールに従って、プラスチック容器やビンなどとしてリサイクルに出します。
少量であっても油を含む製品は、液体ゴミとして扱わず、適切に処理する意識が求められます。”
事業者が処理を依頼する場合の費用相場は?
“事業者が廃食用油の処理を専門業者に委託する際の費用は、排出量、回収の頻度、地域、そして委託する業者の料金体系によって大きく異なります。
そのため、明確な全国一律の相場というものは存在しません。
料金は一般的に「収集運搬費」と「処分費」から構成されます。
課金方式は、1kgあたりの単価で計算される場合や、一斗缶(約16.5kg)1缶あたりで料金が設定されている場合などさまざまです。
状態が良く、リサイクル価値が高い廃食用油の場合、有価物として業者に無料で引き取ってもらえたり、逆に買い取ってもらえたりするケースもあります。
複数の業者から見積もりを取り、サービス内容と料金を比較検討することが賢明です。”
まとめ
“廃食用油の処分は環境への影響を考慮した適切な方法で行う必要があります。
家庭では油をシンクに流す行為は絶対に避け凝固剤で固める新聞紙などに吸わせるといった方法で可燃ゴミとして出すのが基本です。
さらに環境貢献を考えるなら自治体やスーパーが設置する回収拠点に持ち込みリサイクルする選択肢もあります。
一方飲食店などの事業活動で発生する廃食用油は産業廃棄物にあたるため法律に従い許可を持つ専門の収集運搬業者に適正な処理を委託する義務があります。
それぞれの立場と状況に応じて正しい処分方法を実践することが水質汚染の防止と持続可能な社会の実現につながります。”