“建築物の解体やリフォーム、DIYなどで発生する廃石膏ボードは、その処分方法に専門的な知識が必要です。
この記事では、事業者および個人が廃石膏ボードを処分する際の具体的な方法や費用相場、法律上の注意点を解説します。
また、近年注目されているリサイクルの現状にも触れ、安全かつ適切に処理するための情報を提供します。”
廃石膏ボードは産業廃棄物|原則として一般ごみでは捨てられない
“事業活動から排出された廃石膏ボードは、廃棄物処理法において「ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず」に分類される産業廃棄物にあたります。
そのため、一般のごみ収集に出すことはできず、都道府県知事などから許可を得た産廃処理業者へ委託して、法令に則った方法で処理しなければなりません。
個人がDIYで排出した場合も、多くの自治体では産業廃棄物に準じた扱いとなり、一般ごみとしての収集は受け付けていないのが現状です。
これは、廃石膏ボードが最終処分場で水分と反応すると、人体に有害な硫化水素を発生させるリスクがあるためです。”
【事業者向け】事業活動で出た廃石膏ボードの処分方法
“事業活動に伴って生じた廃石膏ボードは、産業廃棄物として法律で定められた手順に沿って処分する必要があります。
主な処分方法には、専門の処理業者に委託する方法と、排出事業者自らが最終処分場まで運搬する方法と、自治体のゴミ収集(少量のDIYのみ)の3つが考えられます。
どの処分方法を選択するにしても、廃棄物処理法を遵守し、適正な処理を徹底することが排出事業者の責任です。”
許可を持つ産業廃棄物処理業者に委託する
“廃石膏ボードを処分する最も一般的で安全な方法は、産業廃棄物収集運搬業と処分業の両方の許可を持つ専門業者に処理を委託することです。
業者を選定する際には、必ず許可証の有効期限や事業範囲を確認し、廃石膏ボードの取り扱い実績が豊富かどうかを確かめましょう。
複数の業者から見積もりを取得し、料金だけでなく、対応の丁寧さやリサイクルの可否なども比較検討することが重要です。
契約を締結した後は、マニフェスト(産業廃棄物管理票)を交付し、廃棄物が最終処分まで適正に処理されたかを確認する義務があります。”
自社で最終処分場へ運搬・持ち込みする
“排出事業者自身が、廃石膏ボードを許可を持つ最終処分場へ直接運搬することも可能です。
この方法では、自社で運搬するため収集運搬業の許可は不要ですが、運搬中の飛散や落下を防ぐための措置を講じる義務があります。
また、持ち込みを希望する最終処分場とは事前に契約を結び、受け入れ基準や料金、搬入可能な日時などを詳細に確認しておく必要があります。
運搬コストを削減できる可能性がありますが、法令遵守の観点や手続きの手間を考慮すると、専門知識を持つ処理業者へ一括して委託する方法がより確実といえます。”
【個人向け】DIYで出た少量の廃石膏ボードを処分するには
“個人のDIYなどで発生した少量の廃石膏ボードの廃棄は、事業活動で出るものとは区別されることがあります。
しかし、有害物質の発生リスクなどから、多くの自治体で一般ごみとして収集することはできません。
そのため、個人で処分する場合でも、自治体のルールに従う、専門の処理施設に持ち込むといった適切な方法を選択することが求められます。”
お住まいの自治体のルールを確認する
“DIYなどで個人が廃石膏ボードを処分する場合、最初に行うべきことは、お住まいの自治体のルールを確認することです。
多くの自治体では、廃石膏ボードを「処理困難物」や「収集できないごみ」として指定しています。
自治体の公式ウェブサイトや、配布されるごみ分別パンフレットを確認するか、環境課などの担当部署に直接電話で問い合わせましょう。
自治体によっては、少量であれば特定の条件下で受け入れたり、対応可能な専門業者を案内してくれたりする場合があります。
自己判断でごみステーションに出すことは絶対に避けてください。”
地域のクリーンセンターやごみ処理施設へ直接持ち込む
“自治体によっては、地域のクリーンセンターやごみ処理施設へ直接持ち込むことで、廃石膏ボードの処分を受け付けている場合があります。
ただし、すべての施設が対応しているわけではないため、必ず事前に電話などで確認が必要です。
受け入れ可能な場合でも、運転免許証などの身分証明書の提示が求められたり、10kgあたり数十円から数百円といった重量に応じた処理手数料が発生したりするのが一般的です。
また、持ち込める量やサイズに上限が設けられていることもあるため、施設の規定を事前に調べてから搬入しましょう。”
購入したホームセンターやリフォーム業者に引き取りを相談する
“石膏ボードを購入したホームセンターが、有料の引き取りサービスを実施している場合があります。
購入時のレシートが必要になることもありますが、どこに処分を依頼すればよいか分からない場合に有力な選択肢となります。
また、小規模なリフォームを業者に依頼した際に出た廃材は、基本的に施工業者が産業廃棄物として適正に処分します。
もしDIYで余ったボードがある場合、その業者に相談すれば、工事の廃材とあわせて引き取ってもらえる可能性もあるため、一度確認してみる価値はあります。
この処分方法は、自分で運搬する手間が省ける点が利点です。”
廃石膏ボードの処分にかかる費用の目安
“廃石膏ボードの処分費は、依頼する業者や排出量、ボードの状態によって大きく異なります。
費用は、収集場所から処理施設までの「収集運搬費」と、施設で処分するための「処分費」という2つの料金の合計で決まるのが一般的です。
適正な価格で依頼するためにも、複数の処理業者から見積もりを取得し、料金の内訳を比較検討することが大切です。”
収集運搬費と処分費の合計で料金が決まる
“廃石膏ボードの処分費用は、収集運搬費と処分費の二本立てで構成されています。
収集運搬費は、排出現場から中間処理施設や最終処分場までの距離、使用するトラックのサイズ(2t、4tなど)、必要な作業員の人数によって変動します。
一方、処分費は、持ち込まれた廃石膏ボードをリサイクルまたは埋め立てするためにかかる費用です。
この料金は、重量(kgやトン)または体積(立方メートル)あたりの単価で設定されていることが多く、業者や地域によって単価は異なります。
見積もりを取る際は、これらの内訳が明確に記載されているかを確認しましょう。”
水濡れや汚れなど石膏ボードの状態によって費用は変動する
“廃石膏ボードの状態は処分費を左右する重要な要素です。
特に水に濡れた石膏ボードは水分を吸収して本来の重量よりも重くなるため重量単位で計算される処分費が割高になります。
また泥や油でひどく汚れていたり壁紙(クロス)や釘ビスなどの異物が多く付着していたりする場合も注意が必要です。
これらの不純物はリサイクルの妨げとなり選別作業に余計な手間がかかるため処理業者によっては追加料金を請求されたり通常より高い処分単価が適用されたりすることがあります。
可能な限り分別しきれいな状態で排出することが費用抑制につながります。”
廃石膏ボードを処分する際の4つの注意点
“廃石膏ボードを処分する際には、環境への影響や法的な規制について正しく理解しておくことが不可欠です。
有害物質の発生リスクや、アスベスト含有の可能性、排出事業者に課せられる法的な義務など、安全かつ適法に処分を進めるために知っておくべき重要な注意点があります。
これらを軽視すると、重大な事故や厳しい罰則につながる恐れがあります。”
1. 硫化水素が発生する危険性を理解しておく
“廃石膏ボードの主成分である硫酸カルシウムは、管理されていない処分場などに不適切に埋め立てられると、酸素が少ない環境下で硫酸塩還元細菌によって分解され、有毒な硫化水素ガスを発生させる危険性があります。
硫化水素は特有の腐卵臭があり、濃度が高くなると死に至ることもある猛毒ガスです。
過去には、不法投棄された廃石膏ボードが原因で硫化水素中毒事故も発生しています。
このようなリスクを避けるため、廃石膏ボードの廃棄は、遮水工などの対策が施された管理型最終処分場で行うことが法律で定められています。”
2. 製造年によってはアスベストが含まれている可能性がある
“2006年9月以前に製造された一部の石膏ボードや関連建材(ロックウール吸音天井板など)には、飛散性の高いアスベスト(石綿)が含まれている恐れがあります。
アスベストは、吸い込むと肺がんや悪性中皮腫などを引き起こす極めて有害な物質です。
解体する建材の製造年が不明な場合や、アスベスト含有の疑いがある場合は、専門の調査機関に分析を依頼しなければなりません。
もし含有が確認された場合は、「特別管理産業廃棄物」として分類され、飛散防止措置を厳重に行った上で、許可を持つ専門業者による特別な処理が法律で義務付けられています。”
3. 排出事業者はマニフェスト(産業廃棄物管理票)の発行が必要
“建設工事などで廃石膏ボードを排出した事業者は、廃棄物処理法に基づき、処理を委託する際にマニフェスト(産業廃棄物管理票)を交付する義務を負います。
マニフェストとは、産業廃棄物が排出されてから最終処分されるまでの一連の流れを、排出事業者、収集運搬業者、処分業者の三者が伝票で管理・確認するための仕組みです。
これにより、廃棄物が適正に処理されたことを最後まで追跡し、不法投棄などの不正を防ぎます。
マニフェストの交付を怠ったり、虚偽の記載をしたりすると厳しい罰則が科されるため、必ず正しく運用してください。”
4. 不法投棄は法律で厳しく罰せられる
“廃石膏ボードを含む産業廃棄物を許可なく山林や空き地などに捨てる不法投棄は廃棄物処理法で厳しく禁止されている犯罪行為です。
不法投棄を行った場合個人には5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金またはその両方が科されます。
法人が排出した場合は行為者への罰則に加えて法人に対して3億円以下の罰金が科されることもあります。
また格安料金を提示する無許可の業者に処分を依頼しその業者が不法投棄を行った場合依頼した排出事業者も措置命令や罰則の対象となるため業者選びは慎重に行わなければなりません。”
廃石膏ボードはリサイクルできる?現状を解説
“従来、廃石膏ボードの多くは埋め立てによって処分されてきましたが、最終処分場の不足や環境への配慮から、リサイクルの重要性が高まっています。
現在では技術開発が進み、適切に分別・処理された廃石膏ボードは、新たな製品の原料として再資源化することが可能です。
これにより、天然資源の消費抑制と廃棄物の削減に貢献する動きが広がっています。”
廃石膏ボードから新たな製品へ再資源化が進んでいる
“廃石膏ボードのリサイクルは、専用のプラントで破砕機にかけて、石膏と表面の紙を分離することから始まります。
分離された石膏の粉は、品質に応じて新たな石膏ボードの原料として再利用されるのが最も一般的な用途です。
このほか、セメントの原料として混ぜられたり、地盤を固めるための地盤改良材の原料になったりもします。
農業分野では、土壌のカルシウムや硫黄分を補給するための肥料として活用されることもあります。
また、分離された紙も、製紙原料としてリサイクルが可能であり、廃石膏ボードは高い資源価値を持つ素材といえます。”
廃石膏ボードの処分に関するよくある質問
“廃石膏ボードの廃棄については、具体的な処分方法や費用に関する疑問が多く寄せられます。
特に個人の方にとっては、馴染みのない廃棄物であるため、誤った認識を持っているケースも少なくありません。
ここでは、廃石膏ボードの処分に関して頻繁に聞かれる質問とその回答をまとめ、安全で適正な処理を促します。”
Q. 自分で細かく砕いて燃えるごみに出せますか?
“廃石膏ボードを自分で細かく砕いたとしても、一般のごみ(燃えるごみ・不燃ごみ)として出すことは絶対にできません。
石膏は無機物のため焼却には適さず、ごみ処理施設の焼却炉を損傷させる原因となります。
また、万が一埋め立て地に紛れ込むと、硫化水素が発生する危険性を伴います。
粉砕作業中に発生する粉じんを吸い込むことは健康上のリスクも考えられます。
この処分方法は不適切かつ危険であるため、必ず自治体が定めるルールや専門業者の指示に従って、正しい方法で処分してください。”
Q. 庭の土に埋めたり、土壌改良材として使ったりできますか?
“自宅の庭であっても、廃石膏ボードを土に埋める行為は不法投棄と見なされ、法律で禁止されています。
土中に埋めると硫化水素が発生し、土壌や地下水を汚染するだけでなく、周辺の生態系にも悪影響を及ぼす可能性があります。
確かに農業用として成分調整された石膏資材は土壌改良材として流通していますが、建築廃材である廃石膏ボードには紙や接着剤といった不純物が含まれているため、そのまま畑や庭に撒くことはできません。
適切な最終処分またはリサイクルルートに乗せることが必須です。”
Q. 廃石膏ボード1枚だけでも回収してもらえますか?
“産業廃棄物処理業者の多くは、廃石膏ボード1枚という極めて少量の場合でも回収に対応してくれます。
ただし、注意点として、多くの業者では「最低出張料金」や「基本料金」といった形で最低料金を設定しています。
そのため、たとえ1枚の回収であっても、トラック1台を手配する収集運搬費として数千円から1万円程度の費用がかかることがあり、結果的に処分単価は非常に割高になります。
もし他に処分したい不用品があれば、それらとまとめて依頼することで、費用を相対的に抑えることが可能です。”
Q. 無料で廃石膏ボードを回収してくれる業者はありますか?
“廃石膏ボードの処分には、収集運搬費や中間処理費、最終処分費といった様々なコストが発生するため、正規の許可業者が無料で回収することはまずあり得ません。
「無料回収」を謳って巡回している業者や、チラシを配布している業者は、無許可で営業している悪質な業者の可能性が非常に高いです。
こうした業者に依頼すると、高額な追加料金を請求される、山中などに不法投棄されるといったトラブルに巻き込まれるリスクがあります。
不法投棄が発覚すれば依頼者も責任を問われるため、必ず許可を持つ業者に適正な料金を支払って処分を依頼してください。”
まとめ
“廃石膏ボードの廃棄は、事業活動で排出された場合は産業廃棄物として、法規制に則った厳格な処理が求められます。
排出事業者は許可を持つ専門業者に委託し、マニフェスト制度を適切に運用して、処理の全工程を管理する責任があります。
個人がDIYで排出した少量のものであっても、一般ごみとして安易に捨てることはできず、自治体の指示に従うか、専門業者に相談する必要があります。
処分費用、硫化水素の発生リスク、アスベスト含有の可能性などを正しく理解し、不法投棄などの違法行為を避け、安全かつ適正な処分を徹底してください。”