産業廃棄物は廃棄物処理法で20種類に区分され、種類ごとに委託先の許可品目や処理方法が変わります。自社の廃棄物がどれに当たるか判断できないまま委託すると、契約書やマニフェストの記載が実態と合わず、排出事業者が責任を問われかねません。当記事では、20種類それぞれの定義と具体例に加えて、業種によって区分が変わる7種類と、特別管理産業廃棄物との違いを整理します。分別と委託の判断基準としてお役立てください。
産業廃棄物の20種類とは?定義と具体例
産業廃棄物は、廃棄物処理法で直接定められた6種類と、政令で定められた14種類を合わせた20種類が当てはまります。法律が直接定めているのは燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類の6種類で、残りの14種類が政令で追加された区分にあたります。
20種類は、業種を問わず産業廃棄物になるものと、特定の業種から出たときだけ産業廃棄物になるものに分かれます。燃え殻からばいじんまでの12種類は、製造業でも小売業でも同じ区分です。一方、紙くずや木くずなど7種類は、排出した事業者の業種によって扱いが変わります。対象業種以外から出た場合は事業系一般廃棄物にあたり、市区町村のルールに沿った処理が必要です。
自社の廃棄物がどこに位置するかは、次の一覧で確認できます。
業種で区分が変わる7種類は、対象となる業種と条件が細かく決まっています。
(出典:東京都環境局「産業廃棄物の具体例」)
(出典:東京都環境局「産業廃棄物の種類」)
以下では、20種類それぞれの定義と具体例、事業者が押さえておきたい処理の方向性を順に解説します。
燃え殻
燃え殻は、事業活動に伴って生じた石炭がらや焼却残灰などの燃え残りです。業種の限定はなく、焼却炉やボイラーを備える事業者であれば区分は共通です。処理は最終処分場での埋立のほか、セメント原料や路盤材として再生利用する経路があります。
有害物質を基準値を超えて含む燃え殻は特別管理産業廃棄物に区分されるため、分析結果を確認してから委託先を決めましょう。焼却炉から出る灰でも、集じん装置で集めたものはばいじんに区分される点に注意が必要です。
汚泥
汚泥は、工場排水などの処理後に残る泥状のものと、各種製造業の製造工程で生じる泥状のものを指します。有機性汚泥と無機性汚泥に大別され、水分を多く含む点が共通します。
業種の限定はありません。
処理では脱水や乾燥で減量してから焼却や埋立に回すほか、セメント原料や肥料として再生利用する方法もあります。含水率が高いまま運搬すると容積あたりの費用がかさむため、排出元での減量が費用を抑える近道です。
廃油
廃油は、鉱物性と動植物性の油脂にかかわるすべての廃油を指します。業種の限定はなく、車両整備や金属加工、飲食まで幅広い事業者から排出されます。
処理は再生重油などの燃料へのリサイクルと焼却が中心で、水分を含む場合は油水分離を経てから処理する流れです。引火性の強い廃油は特別管理産業廃棄物として別区分になるため、委託前に性状を確認します。廃食用油は飼料や燃料への再生ルートがあり、分けて保管すると再資源化しやすくなります。
廃酸
廃酸は、廃硫酸や廃塩酸、有機廃酸類を含むすべての酸性の廃液です。業種の限定はなく、酸性であれば濃度の高低にかかわらず廃酸に区分されます。
処理では中和した上で排水処理し、中和で生じた泥状のものを汚泥として処分する流れです。腐食性が著しく強い廃酸は特別管理産業廃棄物の強廃酸となるため、他の廃液と混ぜずに保管します。容器には内容物を明示し、酸専用の保管場所を決めておくと取り違えを防げます。
廃アルカリ
廃アルカリは、廃ソーダ液をはじめとするすべてのアルカリ性の廃液です。廃酸と同じく業種の限定はなく、事業活動から出たアルカリ性廃液はすべて該当します。
処理は酸による中和が基本で、中和後に生じた汚泥を脱水して処分する流れです。腐食性が著しく強い廃アルカリは廃強アルカリとして特別管理産業廃棄物に区分され、対応できる許可を持つ業者への委託が必要になります。酸と同じ場所に置くと混触の危険があるため、保管場所は分けましょう。
廃プラスチック類
廃プラスチック類は、合成高分子系化合物にかかわる固形状と液状のすべての廃プラスチックです。天然ゴム以外のゴム製品が廃プラスチック類に入る点は、分別で間違えやすいところです。
処理は、破砕して再生原料にするマテリアルリサイクルと、固形燃料などによる熱回収に大きく分かれます。再生も熱回収もできないものは、焼却による減量が中心です。汚れや異物が付くと再生利用の受け入れ条件を満たさなくなるため、洗浄と素材ごとの分別が処理費を左右します。
ゴムくず
ゴムくずは、天然ゴムくずだけが該当する区分です。天然生ゴムの切れ端や加工くずが具体例で、合成ゴムを使ったタイヤやチューブは廃プラスチック類に区分されます。区分名だけで判断し、自社のゴム製品をすべてゴムくずとして委託してしまう誤りが起きやすいので注意しましょう。
排出量は他の種類に比べて少なく、処理は焼却や熱回収が中心になります。委託前にゴムの材質が天然か合成かを確認し、契約書とマニフェストの種類欄をそろえておくと、受け入れ時の差し戻しを防げます。
金属くず
金属くずは、事業活動から出た金属の不要物全般を指します。業種の限定はなく、製造業から建設業、小売業まで排出元は幅広い区分です。金属は有価で取引される場合があり、取引価値や排出状況などを踏まえて有価物と判断される場合は、廃棄物として扱いません。
引き取りに費用がかかる逆有償の取引では産業廃棄物として委託契約とマニフェストが必要になるため、取引条件を書面で残しておくと判断の根拠が明確です。
ガラス・コンクリート・陶磁器くず
ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くずは、ガラス製品や窯業製品、コンクリート製品の不要物をまとめた区分です。同じコンクリートでも、建物の新築や解体などの工事に伴って生じた破片はがれき類に区分されるため、発生のきっかけで判断が分かれる点が注意点です。
処理は破砕して路盤材や再生骨材に利用するほか、再生できないものは埋立処分に回されます。びんは色ごとに分けるとカレットとして再資源化しやすくなります。
鉱さい
鉱さいは、金属の精錬や鋳造の工程で生じる残さいです。鉄鋼業や非鉄金属製造業、鋳造業が主な排出元ですが、業種による限定はありません。
高炉スラグはセメント原料や路盤材として再生利用が進んでおり、埋立以外の出口を確保しやすい種類です。有害物質の溶出量が基準を超える鉱さいは特別管理産業廃棄物に区分されるため、成分の分析結果を保管しておきます。
がれき類
がれき類は、工作物の新築、改築、除去に伴って生じた廃材のうち、コンクリートやアスファルトなどの破片を指します。一定規模以上の解体工事や新築工事では、建設リサイクル法に基づく分別解体と再資源化が求められます。
処理は破砕して再生砕石や再生アスファルト合材に利用する流れです。木材や金属が混ざると混合廃棄物として処理単価が上がるため、現場での分別が費用を大きく左右します。
ばいじん
ばいじんは、集じん施設で集められたすすや燃えかすの粉じんです。大気汚染防止法のばい煙発生施設や、産業廃棄物の焼却施設に設けられた集じん施設で捕集されたものが該当します。ボイラーや焼却炉の排ガスから集めた飛灰が代表的な具体例です。
粒子が細かく飛散しやすいため、袋詰めや密閉容器での保管と運搬が前提になります。焼却施設から出るばいじんは有害物質を含む場合があり、基準を超えると特別管理産業廃棄物として、薬剤処理や固化処理を行った上で管理型最終処分場に埋め立てます。
紙くず
紙くずは、決まった業種から出たときだけ産業廃棄物になる種類です。産業廃棄物になるのは、次の5つの業種から出た紙くずです。
これらに当てはまらないオフィスや店舗の紙ごみは事業系一般廃棄物として、市区町村のルールに沿って処理します。ただし、PCBが塗布され、または染み込んだ紙くずは業種を問わず産業廃棄物です。処理は古紙としての再生利用が中心で、機密文書は搬入から溶解まで開封しない溶解処理を選ぶと、情報管理と再資源化を両立できます。
木くず
木くずも、排出する業種によって区分が変わる種類です。産業廃棄物になるのは、次の6つに当てはまる木くずです。
飲食店や小売店から出る木製什器は対象から外れ、事業系一般廃棄物として扱います。処理はチップ化して製紙原料やボード原料、燃料に再生する経路が中心です。釘や金具が残ると破砕機を傷めるため、金属を外してから引き渡しましょう。
繊維くず
繊維くずは、建設業と繊維工業から出た天然繊維くずが対象です。具体例は、建設現場の内装工事で出る畳や麻袋と、繊維工業で生じる木綿くずや羊毛くずです。衣服その他の繊維製品製造業は対象から外れており、アパレル関連から出る布くずは業種の確認が欠かせません。
合成繊維くずは廃プラスチック類に区分されるため、素材で判断が変わる点に注意が必要です。PCBが染み込んだ繊維くずは業種を問わず産業廃棄物にあたり、特別管理産業廃棄物の基準に沿って保管します。
動物系固形不要物
動物系固形不要物は、と畜場と食鳥処理場から出る固形状の不要物です。と畜場でとさつ、または解体した獣畜に係るものと、食鳥処理場で処理した食鳥に係るものが該当します。具体例は、内臓や骨など食用に回らない部位です。食肉処理業以外の飲食店や食品小売店から出る肉の切れ端は対象外で、事業系一般廃棄物として処理します。
処理は化製場での処理や焼却が中心で、油脂などの原料に再生する経路もあります。腐敗が早く臭気も出やすいため、保冷した上で速やかに引き渡す運用が基本です。
動植物性残さ
動植物性残さは、食料品製造業、医薬品製造業、香料製造業で原料として使った動植物の固形状の不要物です。次の4つが具体例にあたります。
原料として使ったものが対象のため、同じ食品関連でも飲食店の調理くずや売れ残りは事業系一般廃棄物です。
処理は飼料や肥料への再生、メタン発酵によるエネルギー回収が中心になります。食品リサイクル法では食品関連事業者に再生利用などの取り組みが求められており、排出量の把握と処理記録の管理が欠かせません。
動物のふん尿
動物のふん尿は、畜産農業に該当する事業活動から出たふん尿だけが産業廃棄物です。牛や豚などの家畜のふん尿が具体例で、酪農や養豚、養鶏を営む事業者が排出元にあたります。ペットショップや動物病院から出るふん尿は畜産農業に当たらないため、事業系一般廃棄物として扱います。
処理は堆肥化による農地への還元が中心で、堆肥舎で切り返しながら発酵させる方法が基本です。一定規模以上の畜産農家には家畜排せつ物法の管理基準が適用され、ふん尿は基準に適合した管理施設で適切に管理する必要があります。
動物の死体
動物の死体は、畜産農業に伴って生じた家畜の死体が対象です。牛や豚などの家畜が飼育中に死亡した場合の死体が具体例にあたります。ペットや野生動物の死体は畜産農業に当たらないため、産業廃棄物には含まれない点に注意が必要です。
処理は化製場での処理や焼却が中心で、法定伝染病が疑われる家畜は家畜伝染病予防法に基づく家畜保健衛生所の指示に従って処分します。腐敗と感染の防止が優先されるため、発生から搬出までの時間を短くする段取りが必要です。
その他の廃棄物(13号廃棄物)
その他の廃棄物は、産業廃棄物を処分するために処理したもので、他の19種類のどれにも当てはまらない廃棄物を指します。廃棄物処理法施行令第2条第13号に定められているため、実務では13号廃棄物と呼ばれます。具体例は、汚泥や燃え殻をセメントで固めたコンクリート固型化物、複数の産業廃棄物を溶融して固めた溶融固化物などです。中間処理で性状が変わり、元の区分では説明できなくなったものが該当します。
委託契約書やマニフェストには13号廃棄物と記載し、元の廃棄物の種類も併せて残すと処理経路をたどれます。
特別管理産業廃棄物の5種類とは?
特別管理産業廃棄物は、産業廃棄物のうち爆発性、毒性、感染性などがあり、人の健康や生活環境に被害を生じるおそれがある性状を持つ産業廃棄物です。通常の産業廃棄物より厳しい基準で管理され、収集運搬と処分の委託先も特別管理産業廃棄物の許可を持つ業者に限られます。
区分は5つあり、それぞれ判定の基準が定められています。
(出典:東京都環境局「特別管理産業廃棄物の判定基準」)
以下では、5つの区分ごとに具体例と管理のポイントを解説します。
引火性の廃油
引火性の廃油は、揮発油類、灯油類、軽油類のうち、引火点が70度未満のものが該当します。ガソリンや灯油のほか、これらを含む洗浄溶剤や廃シンナーが具体例にあたります。常温でも気化して引火する危険があるため、保管場所は火気から離し、密閉できる容器で他の廃液と分けて置きます。
委託時は、許可証で特別管理産業廃棄物の許可品目に引火性廃油が含まれるかを確かめ、マニフェストには廃棄物の種類など必要事項を正しく記載します。性状の判断に迷うときは、引火点の分析データを取得して裏づけを残す方法が確実です。
(出典:環境省「特別管理廃棄物規制の概要」)
強廃酸
強廃酸は、著しい腐食性を持つpH2.0以下の廃酸です。判定はpHの測定値で決まるため、排出時にpH計で測った記録を残しておくと、委託先との種類の確認がスムーズです。保管では耐酸性の容器を使い、アルカリ性の廃液や有機物と接触させない配置にします。酸とアルカリが混ざると発熱や有害ガスの発生につながるため、容器に内容物と発生日を表示して取り違えを防ぎましょう。
排出量が少ない事業場でも、該当すれば管理責任者の設置と記録の管理が必要です。pHが2.0を上回る廃酸であっても、有害物質を基準を超えて含む場合は特定有害産業廃棄物にあたるため、pHの測定と併せて成分も確かめます。
廃強アルカリ
廃強アルカリは、著しい腐食性を持つpH12.5以上の廃アルカリです。金属加工の脱脂洗浄に使ったアルカリ性洗浄液や廃ソーダ液、コンクリート製品の製造工程で出る強アルカリ性の廃液が具体例にあたります。皮膚や目に付着すると重い障害につながるため、取り扱う作業者には保護手袋と保護めがねの着用を徹底します。
保管容器は耐アルカリ性の材質を選び、酸性廃液とは離れた場所に置く配置が基本です。委託先の許可品目に廃アルカリの特別管理区分が含まれているかを、契約前に許可証で確認します。引き渡しまでの保管では、漏えいに備えて容器の下に受け皿を敷き、屋外に置く場合は雨水が入らないよう覆いをかけます。
感染性産業廃棄物
感染性産業廃棄物は、医療機関などから出る産業廃棄物のうち、感染性病原体が含まれ、または付着しているおそれがある廃棄物です。病院や診療所のほか、歯科医院や衛生検査所が主な排出元です。
保管では、内容物が分かるようバイオハザードマークを表示した専用容器に密閉し、注射針は貫通しない硬質容器に入れます。運搬と処分は感染性産業廃棄物の許可を持つ業者に委託し、焼却や溶融、高圧蒸気滅菌で感染性をなくしてから最終処分に回しましょう。
特定有害産業廃棄物
特定有害産業廃棄物は、有害物質を含むために厳格な管理が必要な産業廃棄物をまとめた区分です。該当する範囲は、大きく2つのグループに分かれます。
該当するかどうかは、廃棄物の種類や排出元、有害物質の濃度など、法令で定められた基準に照らして判断します。建物の解体で出る吹き付け石綿や石綿保温材は廃石綿等として、飛散防止措置をとった上で二重に梱包して埋め立てます。PCBを含む変圧器やコンデンサは保管や処分に個別の届出が必要になるため、発見した時点で自治体の窓口に相談しましょう。
(出典:環境省「特別管理廃棄物規制の概要」)
まとめ
産業廃棄物は20種類に区分され、定義と具体例が法令で定められています。紙くずや木くずのように業種で扱いが変わる7種類は、自社の業種と発生した工程の両方から判断します。有害性の高いものは特別管理産業廃棄物にあたるため、委託先の許可品目の確認が欠かせません。
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